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2014年07月08日

前期破水5日目の出産

※最後に産婦さんの旦那さんと本人の感想文があります。

今回は、産婦さん自身が助産師さんで、是非自然なお産をしたいと希望をもってゆいクリニックに里帰り出産をされた方のお産を紹介します。
彼女は大変なお産をのりこえて無事にお産されたので、紹介します。

前期破水とは、陣痛がまだ起こっていない段階で赤ちゃんを包んでいる子宮の中の膜=卵膜(らんまく)が破れて、羊水が子宮外に流れ出ることをいいます。

 破水は普通は分娩の途中で起こることが多いのですが、陣痛が始まる前に破水してしまうことが時にみられます。
前期破水自体は特に問題ないのですが、 破水が起こると、胎児は、子宮の入り口=子宮頸管(けいかん)と腟を介して外界と直接に接することになり、子宮内に細菌が入り込んで、赤ちゃんに感染の危険が生じることになります。
 ほとんどの例では破水後、短時間のうちに自然陣痛が始まることになりますが、なかには破水をしているのになかなか自然に陣痛が起こらない場合もあり、その場合には陣痛をつけるお薬を使うことになります。

でも、お薬を使っても必ずよい陣痛が起こるとは限らず、その場合に赤ちゃんの感染のリスクと陣痛がきてお産になるのをてんびんにかけてどこまで待つか検討が必要になります。
通常は待っても48時間くらいなのですが、今回、5日目まで待ってやっと来てくれた赤ちゃんがいました。
幸い感染兆候もなく、元気にきてくれました。

妊娠37週で破水して、まだあまり子宮口が準備されていないことが予測されたので、入院して翌日に陣痛がなかったので、子宮収縮剤を内服してもらいました。少し陣痛が来たのですが、そのままお産にはならず。
それを3日間繰り返して、破水後4日目には子宮口も8cmまで開いてよい陣痛も来始めたのですが、その後翌朝になってもお産にいたらず。
5日目の朝にも8cmのままかわらない状況でした。

血液検査で炎症反応がなくても赤ちゃんの感染が起こっていることもあり、抗生剤使いながらもどこまで待つかぎりぎりのところでした。

赤ちゃんは回旋異常といって、少しずつ骨盤内を回って産まれてくるところが、正常と違う回り方をしてしまいうまく出てこられない状態でした。
診察後にしばらくして子宮口は全開大しましたが、赤ちゃんの向きがおかしかったため、赤ちゃんの向きを直して、うまく出てこられるように、赤ちゃんの頭にカップをかけて吸引して、頭が出てくるお手伝いをしました。
が、その時は、赤ちゃんはそのまま出てくることはできませんでした。
でも、吸引をきっかけに回旋が少し正常の方向に向いたのか、そこからグングン赤ちゃんは下りてきてくれて、しばらくしてからお産になりました。

破水後は感染のリスクがあるので、通常は1日まって陣痛がこなければ、お薬を使って陣痛をつけて、それでも産まれなければ帝王切開を考慮することが多いです。
今回血液検査では感染兆候はなかったですが、通常はこんなに待つことはあまりありません。
というのは血液検査で異常がなくても赤ちゃんに感染が起こっていて、赤ちゃんに治療が必要になることがあるからです。

破水後に待つということは、赤ちゃんの感染のリスクがあるのですから、おおっぴらに、こんなに待っていいんだよ、とはいえないです。
でもお産したお母さんの頑張りが素晴らしかったので、今回、紹介させてもらいました。
とってもきつかったと思うけど、どうしても自分からは帝王切開してとはいいたくなかった、待てるなら頑張りたかったとのことでした。
5日目の朝には昼には帝王切開しようと思いましたが、赤ちゃんはぎりぎり12時前に生まれてきてくれました。

この待っている間の経過としては、ゆいクリニックでは自然な陣痛を待つためにまず、破水後12時間で陣痛が起こってこなければ炎症反応(CBC,CPR)をチェックして、抗生剤をスタートしながら自然陣痛をまちます。陣痛がこなければ、陣痛をつけるお薬をつかうか自然に待つか、本人家族と相談します。今回は陣痛をつけるお薬を使いましたが、それでも有効な陣痛になってお産にならずに何日も待つことになりました。また、破水したらできるだけ感染を起こさないように、できるだけ内診をしないというルールも作っています。

赤ちゃんは頭に血腫が出来ていて、入院中に黄疸治療も必要にはなりましたが、とっても元気で退院できたので、本当によかったです。
お産は結果オーライで、よい結果であればよいですが、赤ちゃんに治療が必要だったり、帝王切開が必要だったりすることがあり、いつもどうすればよかったのか、その場で悩みながら、でもなるべく自然にお母さんも赤ちゃんも無事で元気でいてほしいと願っています。
お産に立ち会わせてもらうたびに、赤ちゃんとお母さんの無事に感謝しています。

前期破水5日目の出産

前期破水5日目の出産

前期破水5日目の出産


<ご主人さんの感想文>

16日(月)晴れ時々スコール
17日(火)の朝3:00に家の電話がなりました。
予定日は7月5日(土)だったので、頭の中は「??」でしたが、「破水しちゃった」と聞いて、今日飛んでいくか、それとも仕事を片付けて行くか悩みました。会社の先輩に「仕事はいつでもできるけど、出産は1人1回だから何十年も言われ続けるぞ」と言われ、3:00に会社に電話して「しばらく休みます」と伝え、飛んできました。陣痛、破水、出産くらいのイメージで来た私は嫁さんが意外にケロッとしているし、陣痛もないと聞いて「??」でした。
 抗生物質で感染予防をして、陣発を待っているとの事で飛んできた私は少し混乱しましたが、そう言う事ならと待つことにしました。
 (火)変化なし
   18日(水)促進剤使うも変化なし
   19日(木)  〃
   20日(金)  〃
   21日(土)破水してから4日間経ったのに、陣痛来ないしこの子はどうなったのかと思いつつ、私ものんびりしているし、久しぶりに嫁さんと沖縄でのんびりできて心の中は複雑でしたが、充実した日々を過ごしました。
 この待っている間のゆいクリニックのスタッフの皆さんのやさしい見守りは、今迄の常識で出来上がっていた私たちの不安や焦りをどれだけやわらげてくれたか、感謝の言葉もありません。
 21日(土)朝からようやく自然陣発が始まり、遅かったので昼から少し促進剤をお願いしました。
夜20:00頃には8cm、初産残り3時間。頭の中では「やっと子供に会える」と思いながら嫁さんと出産の間近な事を確信していました。さすったり、押したり、うちわであおいだり、色々やりましたが夜中0:00になっても出てきません。
 先生が「しばらく休んで翌朝朝一から頑張りましょう」の言葉に「何か異常事態が起こっているんだなぁ」と思いながら、この4日間以上の看護でここの人たちに任せておけば大丈夫と思って、朝からの陣痛促進に備えることにしました。

 NHKのドキュメントができるくらいの難産を乗り越えられたのも、このクリニックの皆様のおかげだと思います。
 昼12:00少し前に子供に会えた時は、涙をこらえるのが大変でした。
 刻一刻と変わる状況判断をテキパキとこなし、頭でっかちの嫁さんにうまく対応してもらった皆様には感激しました。
 まるで我が家のように身勝手にふるまう私にも優しく接していただき、本当にありがとうございました。
 1か月後、また陽人(ひなと)に会える日を楽しみに、家で首を長くして待っています。その間よろしくお願いします。
 周りに勝手に宣伝させてもらいますが、都合が悪ければ行ってください。本当にありがとうございました。


<産婦さん本人の感想文>

 破水からのスタートで、頭の中でイメージしていた出産とはかなり違ったお産の体験になりました。私は胸を張って言えるほどのキャリアはありませんが、7年助産師として本土で働いています。フリースタイル分娩や完全母乳など、在職しているクリニックではできない事が助産師としてもやってみたいと思い、ゆいクリニックを選択しました。
 破水してから5日目、できるだけ待つという院長先生の考えも、私の希望もあり、夫とたくさん散歩したり、ヨガをしてみたり、足浴やフィーリングタッチなどたくさんの助産師さん達にケアしてもらえました。
5日目の朝方、弱い陣痛が始まった時、本当に嬉しく感じました。陣痛がいとおしくてしかたありませんでした。午後にはまた弱くなってしまい、促進剤を内服し、それから一晩声を上げて痛みに耐えました。心強かったのは、ずっとそばに誰かがいてくれて、励ましてくれていた事です。
 実母・夫にもゆいクリニックの助産師さん達、看護師、看護助手の皆におしりを押さえてもらったこと、本当に感謝しています。
私自身助産師として一番おどろいたのは、史先生が私の肛門を押さえ、腰をさすり、呼吸を促してくれたことです。こんな医師がいるなんてと本当に感動して、涙が出たのを覚えています。
 私の助産師としての経験ではない、“待つお産”“自然分娩”というところで、不安になることもありましたが、その都度丁寧に説明をしてもらい、最後まで頑張ることができました。
 汗を流しながらつきっきりでいてくれた助産師さん、おしもに傷ができることもなく、介助して下さり、赤ちゃんも元気に生まれてきた事、本当に感謝しきれません。
 ゆいクリニックでなければ帝王切開になっていただろう私のお産。
本当に貴重で一人の女性として、助産師として、とても勉強になりました。ゆいクリニックのスタッフのような関わりがこれから私がケアをさせていただく時、できたらなと思います。
 あと、お産の時、力尽きそうなわたしにおにぎりとスムージーを用意して下さり、本当にありがとうございました。
あれがなければふんばれなかったと思います(笑) 
 書ききれない位で感謝をしたいことがありすぎます。
ゆいでお産できたことが本当に自慢です。
これからもたくさんの人にゆいクリニックでの素敵なお産をしてほしいなと思います。
 本当にありがとうございました。






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Posted by 島袋 史 at 12:49│Comments(0)診療
 
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産婦人科ゆいクリニック http://www.yuiclinic.com/