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2012年06月15日

前期破水

この記事に関して、最初に書き込みをした後にコメントをいただいたので、少し訂正を加えています。

前期破水とは、陣痛がまだ起こっていない段階で赤ちゃんを包んでいる子宮の中の膜=卵膜(らんまく)が破れて、羊水が子宮外に流れ出ることをいいます。
 破水は普通は分娩の途中で起こることが多いのですが、陣痛が始まる前に破水してしまうことが時にみられます。前期破水自体は特に問題ないのですが、 破水が起こると、胎児は、子宮の入り口=子宮頸管(けいかん)と腟を介して外界と直接に接することになり、感染の危険が生じることになります。
 ほとんどの例では破水後、短時間のうちに自然陣痛が始まることになりますが、なかには破水をしているのになかなか自然に陣痛が起こらない場合もあり、その場合には陣痛をつけるお薬を使うことになります。
でも、お薬を使っても必ずよい陣痛が起こるとは限らず、その場合に赤ちゃんの感染のリスクとてんびんにかけてどこまで待つか検討が必要になります。
通常は待っても48時間くらいなのですが、今回、丸々6日間まってやっと来てくれた赤ちゃんがいました。幸い感染兆候もなく、元気にきてくれました。破水したのが、妊娠36週0日という満期(妊娠37週から41週)より少し早めの時期だったのもなかなか陣痛がこなかった理由かとも思います。ただ、36週というほぼ満期の時期であり、破水後は感染のリスクがあるので、通常の医療施設では1日まって陣痛がこなければ、お薬を使って陣痛をつけていくのがふつうです。
感染兆候はなかったですが、こんなに待つことはあまりありません。
お産したお母さんから是非このことをブログに載せてね、と宿題を渡されて、ちょっと悩みました。
破水後に待つということは、感染のリスクがあるのですから、おおっぴらに、こんなに待っていいんだよ、とも言えないですし。
でもやはり頑張ってお産したお母さんの気持ちに応えて、ご紹介します。
今回、お産する方と家族とも相談しながら、できるだけ待ちたいと希望されて、途中3日目くらいに陣痛をつける薬を使ったけれど陣痛は起こらず、羊水が少し減っていて心配しながら、今日こそはもう一度陣痛を受けようと思っていた日に自然に陣痛が起こって、赤ちゃんは来てくれました。
この待っている間の経過としては、ゆいクリニックでは自然な陣痛を待つためにまず、破水後12時間で陣痛が起こってこなければ炎症反応(CBC,CPR)をチェックして、抗生剤をスタートしながら自然陣痛をまちます。2日くらいはまちます。それでも陣痛がこなければ、陣痛をつけるお薬をつかうか自然に待つか、本人家族と相談します。今回は待つことを希望されたのでまずは待ったのですが、翌日羊水がポケットで2cmはありますが、全体的には少なくなってきていたので、陣痛をつけるお薬を使いました。そして一日中赤ちゃんの心拍をモニターして一度も徐脈がなく赤ちゃんが元気であったため、また翌朝の羊水はほとんど変化が無かったたため、このまま連日誘発(陣痛をお薬でつける)してもお産には至らないだろうと判断して待ちました。その間不安がって毎日炎症反応のチェックをしたがるというスタッフと意見も戦わせましたが、12時間後、その2日後に採血したところ炎症反応がほとんど変化無かったため、それも待った理由でした。
また、破水したらできるだけ感染を起こさないように、内診をしないというルールも作っています。
日曜日の夜中から陣痛が始まって、月曜日の朝になって痛みが強くなった後に、また午後になって陣痛が弱まったりして、途中でなかなかお産がすすまないでかなり心配しました。
羊水もかなり少なくなっていました。
羊水が減ると子宮の壁と赤ちゃんの体に臍帯(へそのお)が圧迫されて赤ちゃんは陣痛の間に十分な酸素がもらえずに心音が下がることがあります。でも、羊水はほとんど無かったけれど、あまり心音は下がらずに、赤ちゃんは最後はスムースに出てきてくれました。
2156gとちょっと小さめでしたが、とっても元気で本当によかったです。
お産は結果オーライで、よい結果であればお伝えしやすいですが、うまくいかないこともあり、いつもどうすればよかったのか、その場で悩みながら、でもなるべく自然にお母さんも赤ちゃんも無事で元気でいてほしいと願っています。
クリニックをオープンして半年ちょっとがたって、色々悩みながらですが、それでも、やっぱり、ゆいクリニックをたちあげて本当によかったとお産に立ち会わせてもらうたびに思って感謝しています。
特に以前のお産を立ち会わせてもらって、また次のお産をゆいクリニックで出産された方が数名して、その中でも、前回帝王切開でのお産になった方で、今回自然分娩できた方をお世話させてもらった時には、本当にありがたいことだと思いました。
帝王切開後のお産に関してはまたいつか書き込みしたいと思います。

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Posted by 島袋 史 at 01:58│Comments(1)診療
この記事へのコメント
先生の言うように結果オーライだから良かったのか?家族の希望も考えつつ産科医として積極的な医療介入も必要だったのでは?とも思います。また病院それぞれの出産に対する考えかたもあり、今回ゆいクリニックで行った事は他の病院ではまずない。ことも追加でブログに書かれた方がいいと思います。
Posted by タロット at 2012年06月16日 00:54
 
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