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2017年04月24日

リプロダクティブ・ライツ

琉球新報の論壇に昨日私の投稿文が掲載されたのでご紹介します。

4/23(日) 『琉球新報』朝刊8面 「論壇」に「リプロダクティブ・ライツ」について

掲載文全文
論壇/島袋 史/リプロダクティブ・ライツ/権利を堂々と行使して
 
 産婦人科の現場では望まない妊娠をして産むか産まないか苦悩の末、選択をしなければならない女性をサポートすることがある。
 「第7回男女の生活と意識に関する調査」(日本家族計画協会、2014)によると、人工妊娠中絶を受けたことがある女性は13・2%、そのうち25・9%が中絶を繰り返している。中絶を受けたときの気持ちは、過去数回の結果で「胎児に対して申し訳ない気持ち」が常に最多で、「人生において必要な選択である」「自分を責める気持ち」が第2位、第3位を占めている。
 一方、社会保障審議会の専門委員会の「子ども虐待による死亡事例などの検証結果等について(第12次報告)」によると、心中以外の虐待死事例551例のうち「望まない妊娠、計画していない妊娠」が24・3%と最多で、「妊婦健診未受診」23・2%、「母子健康手帳の未発行」18・5%、「若年(10代)妊娠」16・9%と続く。
 これは何を意味するのだろうか。予定外の妊娠による出産が、児童虐待などさまざまな社会の事件を通して必ずしも命の尊重につながらない現実があることに私たちは既に気付いているはずだ。
 芽生えた命の尊厳、生きる権利を保障するためにも、本来は望まない妊娠を避けることが第一義であろうが、どうしても人工妊娠中絶を選択せざるを得ない事実があるということである。それは、女性だけが責めを負うものではなく、男性もその責任に無自覚であってはならない。
 「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)は国内法・国際法および国連での合意に基づいた人権の一つで「人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由を持つことを意味する」と定義される。その中には人工妊娠中絶も権利として含まれている。しかし中絶について罪悪感やリプロダクティブ・ライツの行使として受け止めることができず、ネガティブな感情を持つ人が多い。
 日本の法律でも、人工妊娠中絶には配偶者の同意が必要とされている。しかし、それが現実に即しているのか、リプロダクティブ・ライツの行使を阻んでいないか、私はそろそろ見直す時期に来ていると考える。
 なぜ、人は性で触れ合うのか、男女問わず早い段階からの性教育、望まない妊娠を避けるためにも確実な避妊の方法をタブー視せず教えることが必要だと思う。望まない妊娠を避け、性を生きるために体に負担の少なく、より確実な経口避妊薬や子宮内避妊具などの選択でリプロダクティブ・ライツを堂々と行使してほしい。

リプロダクティブ・ライツ


字数制限のある中でなかなか伝えたいことを伝えるのは難しいですが、ここで伝えたかったのは、日本女性の多くが避妊にコンドームのみを使っていて、望まない妊娠で産むか産まないかの選択を迫られるという状況に、もっと有効な避妊方法を使用するべきだという事。
またもし中絶を選択する場合に、倫理的に様々な意見があるが、産まない選択をするのであればそれは女性の権利で有り、後悔や自責の念にかられずに、産まない選択した自分に前向きになるべきであるという事。でも望まない妊娠を避けるより確実な避妊方法があるので、妊娠の事実に直面する前に避妊に向き合って欲しい。
もしも産まない選択をしたのであれば、「これからの自分の人生のために最善の選択をした」ということを自分に認めること。
後悔をしないように、産むか産まないかの選択をするための時間を持つこと。おなかの赤ちゃんに感謝して、今回の妊娠について結論がどうであれ、前向きにとらえられるようにすること。
又、中絶の同意書に配偶者の同意が必要な点について、夫が不倫してパートナーが中絶する場合には妻の同意は必要無いのに、妻が不倫して妊娠した場合には夫の同意が必要であるという同性の平等に欠く状況があるということ。
これは法改正が必要なので、声を上げていかないといけないです。

最近、離婚後に妊娠した場合に離婚後300日以内に生まれた子どもは前夫の子とするという300日ルールが改正となった動きがありましたが、中絶の問題、女性のリプロダクティブ・ライツを守るという観点でも、まずはこういう問題があるということを知ってもらうことから必要なのではないかと思います。

以上投稿文の紹介でした。



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Posted by 島袋 史 at 07:25│Comments(0)投稿記事性教育
 
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