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2014年02月16日

白川嘉継先生講演「親子の絆づくりの大切さについて~産科診療所でできること~」

先日、小児科医の白川嘉継先生にゆいクリニックでスタッフ向けに講義をしてもらいました。

白川先生は福岡新水巻病院 周産期センター  みずまき助産院 ひだまりの家で働かれています。小児科医が助産院をつくられたということはなかなか無いことだと思いますが、白川先生に伺ったら特にあまり意識したことは無かったとのことです。
母子を小児科医の立場から長年支えておられて、親子の愛着形成の大切さについて講演をされたり、本を書かれています。
母子を支える中で、助産院でされているような取り組みが必要と感じられているという事です。
昨年出版された本は、
「人生の基盤は妊娠中から3歳までに決まる: 人生でいちばん大切な3歳までの育て方」

白川嘉継先生講演「親子の絆づくりの大切さについて~産科診療所でできること~」

です。
著書の中で、親子の愛着形成の大切さについて先生はのべられています。
子どもは母親からしっかり受け入れてもらうという体験が必要で、そうすれば否定的な感情は持ちにくくなるということで、子どもの時に認められた体験が元になると講演でも教えてくれました。
今回先生は、ゆいクリニックでスタッフ向けに
「親子の絆づくりの大切さについて~産科診療所でできること~」という題名で講義をしてくださいましたが、先生の講義の中から印象に残ったことを紹介したいと思います。

親子の愛着とは

困ったときの助け
乳幼児が不安に駆られた時に養育者によって不安をなだめる行動
対人関係の基礎
自律的情動コントロールの基盤
社会的行動の基盤(内在化された愛着者)
トラウマからの防波堤:レジリアンスの獲得
リラックス・安心:緊張、警戒からの解放、生理的安定の基盤
(脈拍数が目安で不登校の児童が学校にいけるかどうかがわかる)

抱き癖がつくから抱きすぎない方が良いという言葉は子どもの集団欲を満たすことを奪ってしまった。集団欲が満たされないと将来摂食障害(過食や拒食)を起こしやすくなる。親子の愛着形成がうまくできないとそれが親子間に連鎖していく。抱かれることをしなかった母親は子どもをうまく抱くことができない。
だから、母親にそれを教えていって、連鎖を断ち切ることが大切。
母親から受け入れてもらっていれば否定的な感情をもたない。子どもの時に認められた体験がもとになる。
乳児は放置されると交感神経が緊張して、前額部の体温が下がるという実験を紹介。乳児は母親と離れることは、原始では死を意味しており、強い恐怖を感じる。乳児が抱かれて愛着形成を培っていく。

また、様々なタイプの子どもの不安定な形を紹介
不安定・両極型 
不安が強い。注目してもらいたくて暴れる。子どもがお母さんこっち向いてと暴れるタイプ
不安定・回避型 
母親との関わりが乏しく、おとなしい。愛着行動を最小限に制御してしまう。学業依存やスポーツ依存など依存に陥りやすい。スポーツ依存の場合には大人になってからアルコールやたばこなどに依存しやすくなるので、注意が必要。
混乱型 
母親的人物の喪失や深刻な外傷体験が悪影響を及ぼす。
母親に助けて欲しいのに拒絶されてしまったりする。学業でいい点を取ったときだけ母が喜んでくれた場合など。精神疾患につながりやすい。
本来安全基地であるべき親が恐怖の源泉となってしまう。

子どもの行動異常の背景には見捨てられる不安がある。子どもが親との間に愛着を形成できない場合に、見捨てられる不安が起こり、親子のきずな作りができなければ子どもは外に飛び出して行けない。
外に出ても何かに依存しないといけない状態になる。
母親が子どもに向いて子どもを受け入れられるようになる=子どもとの愛着形成を行っていく  
そのためには脳が女性脳から母性脳になっていく必要がある。
母性脳になるために、出産中にたくさん出てくるオキシトシンというホルモンは母性脳になるための助けとなる。

人生のごく初期の体験を含めた環境が大切。

読み聞かせのすすめ

子どもの言葉の遅れに対しては読み聞かせがとてもよい。読み聞かせをすることで、子どもとつながりやすくなる。読み手にも心の安定が得られる。子どもが落ち着いて聞けない場合には寝ている時に読んであげても良い。

オキシトシンホルモン 
陣痛をつける作用がある。母乳分泌を促す作用がある。それだけでなく、リラックス効果や人を信頼しやすくなると言う効果もある。
(先生の講義ではお話されていませんでしたが、雄のラットにオキシトシンを投与したら、急に子どもにかまいだしたという実験報告もあり、育児ホルモンとしての効果も報告されている)
オキシトシン分泌は赤ちゃんをみながら授乳すると増加するが、暗算をさせると分泌が低下するという報告がある。授乳はリラックスして赤ちゃんをみながら行うことが勧められる。
(授乳中に多くの母親がテレビや携帯などをみながら授乳しているというデータがあるが、子どもが下から母親を見上げたときに母親が自分の方を見ていないと不安を感じる。また、他の人との関係を作るための基礎の乳児の時に、他人と視線を合わせる練習として、母親に見つめてもらう必要がある。母親が自分をみてくれているという安心感。母乳育児をしていても、子どもをみていなければ子どもはコミュニケーションを学べない。)

女性脳と母性脳について
オキシトシンホルモンの受け皿である受容体は脳の扁桃体というところにたくさん存在する。扁桃体は恐怖や不安を感じるのに働くが、オキシトシンが働くとそれが抑制される。オキシトシンの働きによって、母親が我が子のために恐怖や不安をものともせずに立ち向かい行動は扁桃体にオキシトシンが作用して誘発される。「母は強し」といわれるゆえんである。母性脳はいったん形成されると長く継続される可能性がある。第1子の子育てから大切である。
心地よさ、リラックスでオキシトシンは増加すると考えられる。
女性脳は妊娠出産前で関心の優先順位が自分自身、自己実現であり、母性脳は妊娠出産後特に授乳中はオキシトシンホルモンに助けられて、関心の優先順位が子どもになる。
陣痛中にオキシトシンホルモンがたくさん出ることは、女性脳から母性脳にかわるチャンスである。
また、陣痛誘発、促進に使われる薬として人工的に投与されるオキシトシンは脳には作用せずに子宮にだけ作用して、痛みのみを感じる。陣痛間欠時のβエンドルフィン(脳内麻薬様物質)によって自然な陣痛時には指を切断する痛みに匹敵するとも言われている陣痛の痛みを感じにくくするため、その助けを得られなくなり、激痛に耐えないといけない状況に陥るかもしれない。
オキシトシンを高めるためには、陣痛を感じること、赤ちゃんと早期に接触すること(この場合産湯に入ってからではなく、羊水がついたまま母親と肌と肌で接触することが大切)、授乳すること、抱っこ=肌と肌との触れあい 幼い頃に抱っこによってもたらされた心地よさ基本的信頼関係 これらが大切。
生まれすぐの抱っこで母体の脳内のオキシトシン分泌が大量におこり、母性脳のスイッチオンとなる。
子どもは歯が生えそろう2才くらいまでは完全に手助けが必要である。

妊娠中から始まる子育て。

2500g未満で3才時に肥満だと心筋梗塞のリスクが高まる。
母乳中のレプチンは肥満抑制につながるため、一見肥満して見える母乳栄養児は人工栄養で肥満の児に比べると将来の肥満のリスクは少なくなる。

妊娠中に夫からの暴力があったり、とても強いストレスがあった場合の男の子に性同一障害が多い。妊娠12週くらいからの強いストレスが母体にあると胎児に影響を及ぼして、男性ホルモンの分泌が阻害される。そのような研究がある。

胎内環境が赤ちゃんに影響を与える。母体のストレスホルモンは胎盤を通じて胎児に行く。


生後のカンガルーケア施行での育児行動についての調査について
出生時体重が2500g以上で入院が11日未満の赤ちゃんと出生時体重が1500g未満で入院が11日以上の赤ちゃんのグループを比較して、母親の面会時の行動を比較した場合に、入院が長くてカンガルーケアをたくさんしたほうが、育児行動が多かったというデータがある。

父性脳のスイッチオン

父親はなかなか、育児に関心を持てない場合がある。仕事を理由に家庭に関われない場合がある。父親の抱っこをすすめるために、短時間の抱っこから初めて父親にもカンガルーケアをしてもらって、赤ちゃんのお父さんの乳首をなめてもらうと、父性脳のスイッチオンになって、早く帰ってくるようになったりする。


読み聞かせ

子どもとの愛着形成をするために、少し大きくなった子供には読み聞かせが有効です。
子どもが落ち着かず集中して絵本を聞けないときには、子どもが寝ている時に読み聞かせをしてあげても良いそうです。
読み聞かせをすると前頭葉の血流が増えて、読んでいる自身も落ち着くことができてよい効果が得られるそうです。

表情豊かなこどもへ

子どもは生後6か月頃に、最も表情を読み取って区別することが出来るようになるので、その時にしっかりと子どもに表情を見せてあげることが大切。


妊娠出産は、女性自身が困難を乗りこえる力を身につけるチャンス 助産がそれを支えることができる。

育児に適した性は
チンパンジーやオラウータンはオスによる育児はまれで、これは雌雄に生存比にもかかわる。人は経済的に援助するほか、幾分世話をすることになっている。


子どもの安定のために、

トラウマからの防波堤となれるように愛着を形成して子どもが護られていると感じるようにする。
困難を乗り越える力(レジリアンス)を身に着けさせる。

レジリアンスを子どもに与えるために

1.オキシトシンにより女性脳を母性脳に変化させて子どもを守る。父親は父性脳で母子を守る。子どもが困ったときに手を差し伸べられるように愛着を形成する。(信頼のオキシトシンホルモン)
2.子供が自分を肯定的にみることができるように子どもを否定しない。(ドーパミン系の活性化)
3.達成感を体験できるように誉める。(ドーパミン系の活性化)
4.子どもに前向きな姿を見せる。(ミラーニューロンを働かせる)
5.体を動かす。運動する。規則正しい生活をする。よく噛んで食べる。(セロトニン系の活性化)
6.思い出をたくさん残す。(βエンドルフィンの増加)
7.しつける。(文化伝統を伝える。対処法を伝える。)
8.子どもが愛されていること、大切にされていることが分かるようにするためには、どうしたらよいか常に考える。(前頭葉の活性化。愛着の深まり)

育児方法は世代間で伝達されていく。愛着形成をうまくできない、抱かれた経験のないお母さんは、子どもをうまく抱くことができない。その負の連鎖を断ち切れるようにサポートが大切。
いつもそばにいるよという

簡単に白川先生の講演についてご紹介しました。
先生のお話を伺って、改めて、親子の絆づくり(愛着形成)の大切さを感じました。お産を支える立場としてお母さんと赤ちゃんを支えていけるように頑張りたいと思います。

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Posted by 島袋 史 at 10:11│Comments(1)日記
この記事へのコメント
情報提供ありがとうございました♪
共感!!うなずくことばかりでした。
母乳育児は一苦労ではありますが、
苦労以上にメリットの方が多いと実感しています。育児をシンプルに直感的に行う最高の方法が母乳の授乳だと感じています♪母乳授乳を推進する事で体内環境や自然環境、食物連鎖にまで興味関心が出ます…(笑)命を生み育てる『母性愛』を体感できる事に連日感謝しています。母乳育児に悩む方は多いです…悩みの軽減のためにも是非ゆいクリニックの『お茶会』『母乳育児サークル』はおすすめです♪出産前から育児支援までの協力に感謝しています。♪
Posted by たいらしょうこ♪ at 2014年02月17日 02:43
 
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